【読書】教養としての投資 著:奥野一成
これまで読んできた投資関連の本とは若干趣の異なる内容が多かった。
その理由の大きな一因として、投資期間の長さがあると思う。ほかの本では、ある程度株価が上がったときの利確を前提としたチャートや指標の捉え方を書いていることが多いが、本書は“永久”に持ち続けることを前提とした投資を行っている。
したがって、その企業を見る視点やPERといった指標も基準とするものが違っていて面白いと感じた。
特に参入障壁といった言葉が多く出てきたが、投資先がどのような参入障壁を持っており、その強度がどれくらいなのか、それを視野に入れたうえで投資判断を下すことで好不況に左右されず長期的な投資が可能になるのだと感じた。
投資先へのスタンス
本書では先述した通り、長期保有を目的とした投資が前提となっているため『投機』と『投資』の違いも以下の通りである。
投機・・・その株がいくらで売れるか
投資・・・その会社がいくらの利益を出すか
上場企業は株価があるゆえに、視点が『投機』に傾きがちになるが、非上場のつもりでその会社の利回り/強み/将来性を考える。そうすることで会社を見る視点をずらすのである。
株式市場は短期的には人気投票に過ぎないが、長期的に見れば付加価値の計測器として機能する
短期での株価推移をみるとその時々のトレンドや出来事で上下をしているが、長期で株価を見てみると利益の増え方と株価はリンクするという。
こういった企業に投資できれば、細かい売り買いをしなくても長く保有することで投資成果が得られるのだ。このことからもいかに利益を継続的に生み出せる企業を見つけるかが重要となってくる。
参入障壁
どのようなビジネスモデルを持っているかが投資可否を判断するのに大きな判断材料となるが、その中でも参入障壁の有無は大きな材料となる。大量生産低コストのような発展途上国型ビジネスモデル(労働集約型)は安い人件費さえあればどこでもできるため、参入障壁は低いといえる。
巨大な設備投資が必要なものは参入障壁が高いと思われがちだが、これも一定の資本があれば克服でき本質的な参入障壁とはなりえない。
ではどういった分野が参入障壁が高いといえるのかといえば、米国でよくみられるサービスも含めた総合力のある先進国型ビジネスモデルがその一例である。それ以外にも確固たるブランドを築いている企業は、ほかの企業が同じ製品を作れたとしても販売網や認知度といったマーケティング戦略・ブランド構築に多大なコストがかかり簡単には競合することが難しく参入障壁が高いと言えるだろう。
また利益を大きく伸ばせるかは「強さ×面積」による。その強さの源泉は参入障壁であるためそれに支えられた強さがあれば海外でも利益を大きく伸ばせる可能性はある。
構造的に強靭な企業
売らなくていい会社を見つけるためには”構造的に強靭な企業”を探すことだ。
①高い付加価値
世の中にとって必要性が高ければ高いほど付加価値が高いといえる。
本書ではディズニーが例に挙げられているが、ディズニーがなければ映画館も賑わわず、レジャースポットもなくなり、プレゼントの幅も狭くなる。これだけの価値がディズニーにはあるため、多少高くてもお金を出す人は多いのである。
②高い参入障壁
理想は「今から競合相手としてその分野に参入しようと思われるか」がある。
コーラやディズニーの分野で新たに参入をしようとしても圧倒的シェアを握られている状況で太刀打ちできると思える人はいないだろう。そういった圧倒的な強さがあると企業としてかなりの強みとなる。
③長期潮流
「今はこれが人気」「来年はこれが流行りそう」といった短期的なものではなく、普遍的・不可逆的なもののことである。
最も代表的なものは「人口動態」。今後世界的に人口は100億人を突破する見込みがありこれが変わることはないだろう。こういったただの予想ではなく将来起こりうる可能性が確実かつそれが変わることがない分野に携わっているビジネスを行っているかどうかが投資判断の基準となる。
どこに投資するか
投資対象は株式、コモディティ、不動産等多くあるが本書では株式以外の投資先についても触れていた。
・FX、コモディティ⇒それ自体に価値があるわけではなく値動きによって損得が出るものでこれは「投機」としている
・不動産⇒REITは家賃収入が分配金の原資となるが、家賃を毎年上げることは難しいため収益には限界がある
・高配当株⇒将来の企業価値を先食いしているようなもので、ある意味複利の効果を諦めているとも考えられる