記録録

日々の記録を書き記したもの

【読書】失敗の科学 著:マシュー・サイド

これまで数多くの失敗を繰り返しここまでやってきた。

そのたびに落ち込み、自責し、恥じ入ることを重ねてきたが、失敗したときの向き合い方を教えてくれる一冊。

 

1.失敗への反応

失敗したとき多くの人は、それを認めなかったり隠そうとする。しかし大切なのは失敗そのものではなく、失敗に対する“姿勢”である。本書では医療過誤を例に出し説明しているが、真相を明らかにし患者に正直に話したほうが結果として訴訟を起こされる確率が下がるようだ。

 

2.失敗から学習する組織とは

「1万時間ルール」という法則があるように、何年もの訓練を積み重ね直感を磨いた結果、驚くほど正確なパフォーマンスを発揮できるようになることがある。

 

これに近い環境で、例えばチェスの選手や看護師は常に自分の間違いがチェックされその結果がでる。そのたびに毎回考え直し、改善し、適応していかなければならない。これが結果としてパフォーマンスの精度向上につながるのだ。

また即自的なフィードバックはそれだけで直感的判断を向上させる効果がある。

 

逆に心理療法士の多くは、時間をかけて経験を積んでも臨床判断の能力が向上しない。その理由として、客観的データがなく各々の基準によるところが多く、患者の退院後の経過もわからないため。ある意味、暗闇の中でゴルフ練習を続けているようなものだ。

 

また何を基準として選択し・判断を下すのか。その部分がはっきりとしていないと経験がスキルと連動しない状況に陥ってしまうことになりかねない。

例えば先の心理療法士を例にとると、彼らは客観的なデータではなく「観察」によって経過診断を下すことがほとんどだ。この方法は非常に信頼性が乏しく、結果的に何が効果があったのか再現性も難しくなってしまう。有意義なフィードバック無しに改善は望めないようにこれでは対処のしようがなくなってしまうのだ。

 

3.マインドセット

人はどんな結果が出ようとそれを自分の考えを肯定する材料にする傾向がある。自分の過ちを認めることができない場合、事実の解釈を変えることで自分を正当化する。これが失敗が繰り返される一因でもあるのだ。

そうならないためにも健全な反証を行うことが必要である。               我々は「分かっている(と思う)こと」の検証ばかりに時間をかけがちだが、本当は「まだ分かっていないこと」を見出す作業のほうが重要となる。

「~しなければ」と対象群の設定を行うと、新たな事実が見えてくることもあるしそれを検証することで正しさを証明できる可能性もある。

 

4.失敗から学ぶには

失敗が起きた時、何故起こったのかより誰の責任かを重視することが往々にしてあるが、これは出来事を単純化させるだけでその非難は我々の学習能力を妨げる結果となる。失敗経験を活かすには、非難ではなく原因追求に時間をかけたほうが将来的に有用ということである。

 

失敗から学べる人とそうでない人の違いは”失敗の受け止め方”の違いが大きい。誤りにしっかりと注意を向けるような態度は学習効果と密接な相関関係がある。

またそういった受け止め方ができる人は諦める時も合理的に判断を下せるのだ。『自分にはこの問題を解決できるだけのスキルが無い』という判断を阻むものがないからだ。ある意味、自分の”欠陥”を認識することを恐れたり恥じたりせず自由に諦めることができるのだ。彼らにとって引き際を見極めて他のことに挑戦するのも、やり抜くのもどちらも成長となるのである。